アソートBOX参加ブランドへのインタビューを毎月更新していきます!
作り手の想いやこだわりを是非とも知って、食べて、感じてみてください。
東京南青山の地で2000年にビーガンのカフェとして創業した「8ablish(エイタブリッシュ)」
代表の川村明子さんにヴィーガンスイーツの魅力や貴重なブランドストーリーを伺いました。
8ablish “ユニバーサルな食の愉しみを” 目指して
8ablish
東京南青山の地で2000年にカフェとして創業、当時からメニューはすべてヴィーガン。
素材にもこだわり、動物性食材はもちろん、白砂糖、保存料、化学調味料は一切不使用。
20周年を迎えた昨年、PARLOR 8ablishとしてリニューアルオープン。
目次
- きっかけは、相棒の「どうせならヴィーガンカフェやらない?」という言葉
- ジェームズボンドから教わったこと
- “誰にも差別のない食の提供”
- やるなら“徹底的に” “柔軟に”
- UNIVERSAL PLEASURE FOR EVERYONE
きっかけは、相棒の「どうせならヴィーガンカフェやらない?」という言葉
―まずはブランド立ち上げのきっかけを教えてください。
川村:21年前に南青山で「カフェエイト」というカフェを開いたんです。
そのときからメニューはすべてヴィーガンで、そのカフェがかたちを変えて、今の「8ablish(エイタブリッシュ)」になっています。
―そんな前からヴィーガンを取り入れられていたんですね、なぜヴィーガンに注目されたのでしょうか。
川村:きっかけは、このブランドを一緒に立ち上げた相棒、清野の「どうせならヴィーガンカフェやらない?」という言葉でした。
ヴィーガンを実践している海外の友人がまわりにいたこともあり、私も「なんか面白そう!」というきっかけで、彼女の言葉を採用し、ヴィーガンカフェを開くことにしました。
でも実際にヴィーガンの世界に足を踏み入れてみると、カルチャーに根付いているもののため、健康志向というより当時はまだ「宗教っぽい、病気っぽい」という印象で、まだまだ “一部の人たちだけのもの” という感じでした。
みんなに愛されるヴィーガンカフェを作りたいと思ったとき、一番簡単にヴィーガンへの敷居を低くするのがデザインだと思いました。
自身のグラフィックデザイナーという肩書を活かし、味はもちろん、とにかくデザインやカフェの内装にとことんこだわり、
“ヴィーガンカフェとは知らずに店内に入ってきたお客さまが、何にも知らないままおいしく食事して、何も知らないまま帰っていく”
そんな世界観を大事にしたいと思い生まれたのが「カフェエイト」であり、現在の「8ablish(エイタブリッシュ)」に繋がっています。
―実際に並んでいるスイーツも味はもちろんのこと、デザイン性の高さに驚きました。
川村:デザインやネーミングは今でも常に意識しています。
一番の特技であり、常に苦労しているところでもあります。
バレンタイン&ホワイトデーの商品「スイートスティッキーミ―、ピュアミスミ―」
川村:どちらかと言えば、最近流行っているような「健康志向」を意識したことはあまりないんです。
ただ、「自分が選ばないものは人にもおすすめしない」という基本的な考え方で、“デザイン、味、見た目” を追求した結果、今のブランドスタイルになりました。
ジェームズボンドから教わったこと
―「8ablish」という名前の由来を教えてください。
川村:カフェをやる前にグラフィックデザインの会社を立ち上げたのですが、会社名を「008(ダブルオーエイト)」にしたんです。
―おや、有名なスパイアクション映画の名前にそっくりですが、、?
川村:ええ、そうなんです。
もともと「007」の映画が大好きすぎて、会社を立ち上げるなら絶対にちなんだ名前にしたいと考えてました。7の次は “8” であることに加え、自分やパートナーの誕生日にも “8” が付いていて。
“ダブルで8” ということで、この会社名になりました。
この “8” という数字と、“establish(創立する)” をかけ合わせて、「8ablish(エイタブリッシュ)」と名付けました。
―なるほど、まさか「007」からきているとはおどろきでした!
川村:「007」は私の今の仕事の軸にもなっています。
ジェームズボンドって普段遊んでるように見えるけど、仕事は必ずやり遂げるじゃないですか。しかもかっこよく!
私も端から見たら遊んでるように見えるかもしれないけど、仕事はしっかりやりきることを一番大事にしています。
―仕事に対する流儀もジェームズボンドから教わったのですね。
川村:きっちり任務を遂行することはもちろん大切ですが、仕事をとことん楽しむこと、そして、“LOVE” (自分のこととして愛すること)も大事にしてます。ベタかもしれませんが。
自分のこととして楽しんでないと、愛してないと、想いは全く伝わらない。
“やると決めたら最後までやりきる、全力で楽しむ、そして愛する”
私の信念です。
川村さんが描いた絵
“誰にも差別のない食の提供”
―では、ブランドを立ち上げて良かったことを教えてください。
川村:“誰にも差別のない食を提供する” というミッションを遂行できていることです。
―かっこいいミッションです。ヴィーガンだとアレルギーなどでお困りの方でもお召し上がりいただけますね。
川村:ええ。
動物性を使用しないという制約を守れば、誰でもヴィーガン食は作れます。
だからこそ、大事なのは材料ではなく、素材そのものの善しあしだと思います。
―なるほど、素材も川村さんのこだわりが詰まっているのですね
川村:一度話題になると、きっと素材より価格重視のものも今後たくさん出てきます。
“ヴィーガン = 健康で全部いいもの” という認識が必ずしも正しい訳じゃないときもあります。
うちの1000円のお菓子だって、素材にこだわらなきゃきっと500円でも出せる。
ただ、みんなで食べられる本当においしいものを本気で目指したとき、素材には妥協したくない。
現時点では100%は難しいかもしれないけど、素材はこれからもとことんこだわっていきたいと思っています。
やるなら “徹底的に” “柔軟に”
―20年以上前からヴィーガンカフェをやられていますが、当時から変わらない、譲れない信念はありますか。
川村:“やるなら徹底的に” です。
グラフィックデザインもそうですが、一度コンセプトを決めたら何があっても絶対に曲げないでやり通します。
今のスタイルになる前にもいくつかカフェやレストランを開きましたが、「ヴィーガン」ということだけは絶対に変えていません。
ただそれは、“柔軟さを欠くこと” とは異なると思っています。
たくさんの人に、“UNIVERSAL PLEASURE FOR EVERYONE(ユニバーサルな食の愉しみを)” という私たちの想いを伝えられるよう、時代や流行に合わせて、表現の仕方は柔軟に変えていくことを大切にしています。
―表現の柔軟性のひとつに、昨年から、お菓子やスイーツにもより力を入れていらっしゃいますね。
川村:ええ。そうなんです。
「テーブルには誰でも来られて、そこには全く差別がなくて、豊かな時間をみんなで過ごす」
基本のスタンスは全く変わりませんが、今度はそれをもっと広めようと思ったときに、持って帰ることができる、人にギフトで渡せるものがお菓子やスイーツだと思いました。
以前からお菓子やスイーツに特化しようと考えていましたが、この判断は、今のコロナの状況を考えると正しかったと感じています。
外出自粛でカフェになかなかお越しいただけないお客さまが多くいる中で、改めて、時間や場所を選ばないお菓子の可能性を実感しています。
―そんな川村さんの想いが、今回のvee ga boo 限定クッキー缶にも詰まっているのですね。
今回、私たちのサービスを一緒にやってみよう!と思ってくださった理由を教えてください
川村:私たちみたいな小さいブランドや会社ができること、大きい会社にしかできないことがあると思いました。
それぞれの長所・短所を補い合って協力できれば、より多くの人にお菓子も想いも届けられると。
なので、大手だからこそできないことがあるときは、私たちに相談してくださいね。
―ありがとうございます、、泣 それはとても頼もしいです😂
UNIVERSAL PLEASURE FOR EVERYONE ―ユニバーサルな食の愉しみを―
―川村さんの思い描く、今後の展望やビジョンはありますか。
川村:より多くの人に知ってもらえるように、どこの国でも、地域でも、私たちのお菓子をお届けできるような仕組みを作ろうとしています。
UNIVERSAL PLEASURE FOR EVERYONE
国境も宗教も、それぞれ個々が抱える背景も超え、多くの人々がスイーツで笑顔になれるような未来を創っていきたいです。
―最後に、このブログを読んでいる方にメッセージをお願いします!
川村:何かにとらわれることなく、純粋にヴィーガンを楽しんでみてください。
ヴィーガンのものを作るには制約があるため、そのまま作ると素朴になってしまいがちです。
だからこそ、クリエイティビティや妄想をうんと働かせて、“どうすればおいしくなるか、かわいくなるか、楽しくなるか” 日々試行錯誤しながら取り組むことに、やりがいを感じています。
人に幸せや楽しみを与えたいと思ったら、自分が常にその一歩先を歩いて、本気で楽しむ姿を見せなきゃいけないと思うんです。なので、少なくとも私は日々全力で楽しんでいます。
あの人あんなに毎日楽しそうで何してんだろう。そんなことを言われる不思議な人になれればいいなと思っています。
ベタかもしれませんが、皆さんも何でも楽しんでみることを大切にしてください。
Profile
川村明子(かわむら・あきこ)
1968年生まれ、愛知県出身。クリエイティブディレクター、グラフィックデザイナー。ニューヨークの美術大学School of Visual Arts Graphic Design学部卒業。Rhodes Family Award受賞。帰国後、企業での勤務を経て20代で独立しデザイン事務所「Double Ow Eight」を設立。数多くの企業のアートディレクションやブランディング、ロゴやパッケージデザイン、広告デザインなど幅広く手がける。2000年、南青山のヴィーガンカフェ「カフェエイト」、2003年に「ピュア・カフェ」をオープン。2014年にデザイン企画会社「アポロアンドチャーカンパニー」を設立。2015年「レストラン・エイタブリッシュ」をオープン。2020年「8ablish(エイタブリッシュ)」にリニューアルし、現在に至る。
Text by 岡﨑可奈(vee ga boo)